「不正対策を強化したくて、いくつか不正検知サービスを比較してみたけれど、『AI型』『ルールベース型』といった言葉が並んでいて、正直どれを選べばいいのか分からなかった」
EC事業者の方から、こうしたお声を伺うことが増えています。不正検知エンジンの「検知手法」は、大きく分けて「ルールベース型」と「AI型」の2つに整理できます。それぞれ得意なこと・向いている事業者像が異なるため、自社の状況に合わない手法を選んでしまうと、期待した効果が出なかったり、逆に正規のお客様の購入を誤って止めてしまったりすることにもつながりかねません。
本記事では、これらの検知手法の違いを整理し、それぞれどのような事業者にフィットしやすいかを解説します。
この記事でわかること
- 不正検知エンジンが何を根拠に「不正かどうか」を判定しているか
- 「ルールベース型」と「AI型」、それぞれの仕組みと、得意・不得意
- 自社の事業特性に照らして、どの手法が合いやすいかを考える視点
そもそも不正検知エンジンは何を見て判定しているのか
不正検知サービスは、会員登録・ログイン・注文(決済)といったタイミングで発生する様々な情報をもとに、そのアクセスや取引が「不正かどうか」のリスクを判定する仕組みです。
判定材料になる情報としては、主に次のようなものがあります。
- 個人・購入情報:氏名、住所、メールアドレス、購入商品、購入金額など
- ネットワーク・位置情報:IPアドレス、接続国・地域など
- デバイス情報:使用端末の種類、ブラウザ設定、言語など
- 行動情報:ページの遷移の仕方、入力の速さ、マウスやタップの動きなど
これらの情報をどう組み合わせ、どう評価するかという「判定ロジックの作り方」の違いが、「ルールベース型」と「AI型」を分ける最大のポイントです。
ルールベース型:「条件」を人が定義し、それに照らして判定する
ルールベース型は、「〇〇の条件に当てはまったら不正の疑いが高い」というルールを人があらかじめ設定し、そのルールに照らして取引を判定する方式です。
例えば、次のような条件が典型的なルールとして使われます。
- 同一のメールアドレス/カード番号/デバイスが、短期間に一定回数以上使われている
- 決済に使われたカードの発行国と、配送先やIPアドレスの国が大きく異なる
- ブラックリストに登録済みの情報(過去に不正が確認されたメールアドレスやカード情報など)と一致する
ルールベース型の強みは、何より「なぜそのリスク判定になったのか」が明確なことです。どのルールに引っかかったのかが分かるため、判定結果を業務担当者が説明・検証しやすく、誤検知が起きた際の原因追跡もしやすくなります。また、自社がすでに把握している不正パターンや、独自に保有しているブラックリストなどの情報を、比較的すぐにルールへ反映できる点も特徴です。
一方で、ルールは「想定していなかった新しい手口」には弱いという性質があります。攻撃側の手口が巧妙化・多様化するペースに合わせて、ルールそのものを継続的に見直し・追加していく運用が前提になります。また、判定に使う情報は基本的に取引時点のデータが中心となるため、決済・注文のタイミングでの防御には強い一方、会員登録やログインの初期段階まで守備範囲を広げるには、別途仕組みを組み合わせる必要が出てくる場合があります。
フィットしやすい事業者像
- 自社の不正傾向やブラックリスト情報をすでにある程度把握しており、それを判定ロジックに直接反映したい事業者
- 誤検知(正規のお客様を誤ってブロックしてしまうこと)が起きた際に、どのルールが原因かをすぐに特定し、ルールの調整やカスタマーサポートでの迅速な対応につなげられる透明性を重視する事業者
AI型:機械学習が「行動」から不正らしさを学習する
AI型は、機械学習モデルが大量の取引・行動データを学習し、そのパターンから不正の可能性をスコアリングする方式です。
大きな特徴は、判定に使う情報の幅が「取引時点のデータ」にとどまらない点です。サイトへの訪問から商品閲覧、カート投入、会員登録、ログイン、注文、決済に至るまで、ユーザーの一連の行動そのものをデータとして収集し、人間らしい自然な操作なのか、それとも機械的・不自然な操作なのかを分析します。この「行動データからユーザーらしさを見分ける」考え方は、行動バイオメトリクスと呼ばれることもあります。
AI型の強みは、人があらかじめ想定していなかった新しい手口や、巧妙に「正規ユーザーのふり」をする不正にも対応しやすいことです。モデルが継続的にデータを学習するため、不正の手口が変化しても、都度人手でルールを書き換えなくても検知精度を保ちやすいとされています。判定作業を自動化しやすく、運用の手間を抑えられる点もメリットです。
一方で、AI型は仕組み上、判定の中身が「ブラックボックス」になりやすい課題を抱えています。ルールベース型では「どの条件に引っかかったか」がそのまま判定理由になりますが、AI型はモデルが出すスコアだけでは「なぜこの取引が不正と判定されたのか」を直感的に説明しづらい場合があります。この点は各サービスも課題として認識しており、「どの情報が原因でリスクが高いと判断したか」を一覧表示する機能を備えるサービスも増えていますが、透明性の作り込み方や粒度はサービスによって差があるのが実情です。また、精度の高いモデルを作るには、ある程度まとまった量の取引データが前提になりやすく、取引量がまだ少ない事業者では、その事業者に最適化されたモデルの効果を実感しにくい可能性もあります。
フィットしやすい事業者像
- 取引量が多く、巧妙化・多様化する不正の手口に自動で追従してほしい事業者
- 会員登録やログインの段階も含めて、EC事業の入り口から幅広く不正対策をしたい事業者
- 不正対策の運用にかけられる社内リソースが限られており、できるだけ自動化したい事業者
なお、AIによるスコアリングとルールベースの両方を組み合わせた「ハイブリッド型」と呼ばれるツールもあります。AIの検知力に、自社で把握している条件をすぐ反映できるルールの即時性を組み合わせた仕組みです。
まとめ:検知手法の違い
| ルールベース型 | AI型 | |
|---|---|---|
| 判定の仕組み | 人が定義した条件(ルール)に照らして判定 | 機械学習モデルが行動データから不正らしさをスコアリング |
| 得意なこと | 判定根拠の透明性、既知パターンへの即時対応 | 未知・巧妙な手口への追従、運用の自動化 |
| 注意したい点 | 新しい手口への対応にはルールの継続的な見直しが前提になる | 判定根拠がスコアだけでは見えにくく、ある程度のデータ量が前提になりやすい |
自社にはどの手法が合うのか
ここまで見てきた通り、「ルールベース型」「AI型」に優劣があるわけではなく、事業の取引量、既存の不正対策の知見、社内の運用リソース、そして「何を優先したいか(透明性か、自動化か)」によって、フィットする手法は変わってきます。
同じEC事業者であっても、取扱商材や不正の傾向、社内体制はそれぞれ異なるため、「どの手法が合うか」は一律には決まりません。だからこそ、特定のツールを前提にするのではなく、自社の状況を踏まえてフラットに比較検討できる相談先を持っておくことが、遠回りに見えて確実な近道になります。
不正検知の手法選びに迷ったら、お気軽にDGBTへ
- 「AI型とルールベース型、結局自社にはどちらが合うのか分からない」
- 「すでに不正検知サービスを使っているが、今のやり方が自社に合っているか確認したい」
- 「不正対策を強化したいが、何から手をつければいいか整理したい」
このようにお悩みの際は、複数の不正検知ツールの導入・運用を手がけてきた知見をもとに、事業者様の状況に合わせてフラットな立場で最適な選択肢をご提案できます。DGビジネステクノロジーまでお気軽にご相談ください。